真珠

美容と健康の生薬として活用される「真珠」

真珠は古くから美容に関する薬として用いられています。クレオパトラが、真珠を粉末化した真珠末をブドウ酒に溶かして飲用していたという話は有名です。

また、中国では長寿の薬として用いられ、楊貴妃も愛用していたといわれています。

このように、真珠といえば美容効果について知られていますが、薬用としても多用されています。

中医学において、真珠は「珍珠(チンジュ)」という生薬名で呼ばれ、解熱や鎮静、 滋養強壮、不眠、結核の治療などに有効だとされ、塗薬や内服薬も数多く出ています。

実は、緑内障など目の疾患についても効能があることも、古くからいわれているのです。

真珠、真珠末の効能

漢方では、真珠や真珠末は「目を明らかにする」生薬として、目の疾患に有効だとされています。効能としては、目の充血、痛み、角膜の混濁などがあります。

また、精神安定的な効能もあるとされ、「本草綱目」という中国の薬学著作にも、その有用性が指摘されています。

ところで、真珠は日本でも目の疾患に有用だと古くから用いられてきました。

19世紀にドイツの医師でもあったシーボルトの著書「江戸参府紀行」に、「日本や中国の医師は、真珠を眼病・耳痛・痙攣などの病気にすすめる」という内容を記載しています。

こうしたことから、真珠を粉末にした真珠末が点眼薬(目薬)にも使われており、また西洋医学の目薬にも真珠の成分が用いられています。

真珠の有効成分

真珠の成分は、約90%が炭酸カルシウムで、このほか有機物やミネラルなどがたくさん含まれています。

近年の研究では、真珠に含まれるコンキオリンという成分も有用だとわかってきています。

真珠は、核の周りを真珠層・有機質層で構成される真珠形成層が覆っています。真珠の主成分は炭酸カルシウムとなり全体の90%以上を占めています。次いで多いのがタンパク質(コンキオリン)、水分となります。マグネシウムやナトリウムなどの微量元素も若干ながら含まれています。

炭酸カルシウムは、真珠をつくる貝の殻(貝殻)にも多く含まれています。アクセサリーに使われる真珠と同じ9、貝殻も90%以上が炭酸カルシウムなのです。真珠にある炭酸カルシウムは、1層の厚みがわずか400nmと非常に薄い層を形成しています。炭酸カルシウムの層とこのあとご説明するタンパク質の層が規則正しく積み重なり、真珠を形作っています。

真珠のタンパク質(コンキオリン)は貝類特有のタンパク質で、有機質層よりも真珠層に多く含まれていると言われています。

緑内障などの目の疾患にも使われる生薬・真珠はこれらの成分が体に何らかの作用を果たしているためではないかと研究が進んでいます。

炭酸カルシウム

炭酸カルシウムは、骨や歯をつくる作用のほか、体液を調節するはたらきを持っており、緑内障の一因とされる房水(ぼうすい)についても、その作用が期待されています。

真珠を作り出すアコヤガイの貝殻から生成された炭酸カルシウムを分析したところ、医薬品の原料として使われる純度だったことは、これまでの研究者らの実験で明らかになっています。

独立行政法人科学技術振興機構が重点地域研究開発推進プログラムとしてサポートした研究では、産業廃棄物として捨てられていたアコヤガイの貝殻から医薬品原料として十分に使える99%以上の高純度の炭酸カルシウム精製物を生成することに成功しています。[1]

現在、医薬品の分野で炭酸カルシウムは、消化管を痛める要因となっている胃酸を中和する酸中和剤などに使われています。また、沈降炭酸カルシウムは、リンを吸着する作用を持つため、血清リン値をコントロールする薬としても処方されることがあります。[2]

炭酸カルシウムは医薬品以外にも、食品のカルシウム強化剤や、工業用としてプラスチック・ゴム・製紙などに使われています。

[1]

出典:(PDF) 『アコヤガイ貝殻からの高純度炭酸カルシウムの抽出』独立行政法人科学技術振興機構 重点地域研究開発推進プログラム [PDF]
[2]

出典:(PDF) 『Sodium arginateにより血清リン値の上昇を認めた2症例』日本透析医学会雑誌,2002 [PDF]

コンキオリン

コンキオリンとはタンパク質の一種で、アワビ貝の真珠層にも含まれている栄養素。コラーゲンの生成を促す作用があることから、水晶体や視神経、網膜など目を構成する組織にも重要なはたらきがあるとされています。

貝殻は炭酸カルシウムを主体にしているが、有機質も含まれている。それらは、一般にコンキリオンと呼ばれている。しかし、コンキリオンは単一の物質ではなく、殻を構成する有機物すべてに対する総称であり、タンパク質をはじめとする多くの物質を含んでいる

出典: 『螺鈿-記憶のフィルター』京都市立芸術大学,安東

最近の研究では、コンキオリンに目薬の主成分にもなっているヒアルロン酸の生成をサポートする働きがあるのではないかと言う研究が進んでいます。ヒアルロン酸は、目の老化を予防するなど目にとって大切な役割を果たす成分です。真珠由来のコンキオリンが緑内障にいい方向に作用する可能性は大いにあると言えるのではないでしょうか。

メカノケミカル法により調製したアワビ貝殻由来加水分解コンキオリンのヒアルロニダーゼ阻害活性は、本酵素が逆に活性化されてしまい、期待される効果を認めることができなかった。しかし従来法で調製した同コンキオリンは、アコヤガイ貝殻から調製した加水分解コンキオリンより非常に強力な阻害活性(IC50=50μg/ml)を有し、魅力的な素材であることが判明した。

出典: 『メカノケミカル効果によって高抽出化した三陸産コラーゲンペプチド・加水分解コンキオリンのヒト皮膚線維芽細胞に与える影響』一関工業高等専門学校,平成25年